米国大統領選の結果が明らかになろうとする中、アジア諸国は早くもシミュレーションを行っている。10月末にシンガポールで開催された「ASEAN円卓会議」では、トランプが当選した場合、より過酷な関税戦争が再開されるとの見方で一致したが、最大の被害者が誰になるかについては見解が分かれ、一部加盟国は中国のみが被害を被ると見ている。しかし、英「エコノミスト」誌は、全てのアジア諸国が敗者になると警告している。
トランプは前大統領任期中に米中貿易戦争を開始し、今日まで、主要な東南アジア諸国はそこから恩恵を受けている。中国からシフトしたサプライチェーンと資金が、これらの国々の海外直接投資(FDI)を顕著に成長させた。ベトナムは疑いなく最大の勝者で、2021年以降のFDIは22%大幅に増加している。
全面的関税戦争、全ての対米輸入品に10%超の関税賦課へ
英「エコノミスト」誌の報道によると、第39回「ASEAN円卓会議」が10月28日にシンガポールで開催され、トランプ当選の可能性について激しい議論が行われ、各加盟国の意見は分かれたものの、トランプがより過激な関税戦争を展開する可能性を排除しなかった。
一部加盟国は、トランプが全面的な貿易戦争を実施する可能性は低く、これを交渉材料として使う可能性が高いと見ている。また、一部加盟国は楽観的に、中国が最大の被害国となり、他のアジア諸国はそこから恩恵を受けられると考えている。
トランプの発言によると、再び大統領に就任した場合、全ての対米輸入品に10~20%の関税を課し、さらに全ての中国からの輸入品に60%の関税を課すとしている。米国はASEAN諸国、インド、日本の主要輸出市場であり、韓国、台湾の第二の輸出国である。
コンサルティング会社「オックスフォード・エコノミクス」のトランプが全面的関税を発動した場合のシミュレーションによると、中国以外のアジア諸国こそが敗者となる。長期的に見ると、米国のアジア地域からの輸入は3%減少し、同地域への輸出は8%減少する。
豪日印は経済・安全保障の利益の下で選択を強いられる恐れ
ユソフ・イサク研究所(ISEAS)上級研究員のジャヤント・メノン氏は、トランプが就任直後、臆病者に見られたくないという心理から、報復的な関税手段は避けられないだろうが、これは「自傷行為」に等しいと指摘している。
メノンは更に説明する:「狭義の貿易収支の観点から見ると、強力な市場を持つ国が特定商品に対して保護措置を講じれば利益を得られる。しかし、より悪い状況として、オーストラリア、インド、日本などの軍事パートナーが経済と安全保障の利益の間で選択を強いられる可能性がある」 (関連記事: 中国「三本の矢」で株価20%上昇も、専門家警告「強気相場ではなく政策相場」と過度な楽観に注意 | 関連記事をもっと読む )
この不確実性だけでも商業利益を損なう。国際通貨基金(IMF)の最新研究報告によると、不確実性が標準偏差1つ分増加すると、二国間貿易が5%減少し、グローバル・バリューチェーンに最も深く組み込まれている国が最大の被害を受ける。