衝突の発端:西門町での「十一行動」
10月1日、中国共産党政権樹立75周年の日に、台北市の西門町で香港の民主化を支持する団体が「十一行動」を実施した。「香港を取り戻せ、時代革命」の旗を掲げ、チベット、台湾、新疆の独立を訴える活動を行っていた。その場に居合わせた中国からの観光客、姚姓の夫婦が旗を引き抜いて地面に投げ捨て、「今日は中国の建国記念日だ。こんな旗を立てるのは許せない」と叫んだ。
台湾当局の厳しい対応:「自重しない迷惑客は歓迎しない」
この事件を受けて、台湾の大陸委員会は「自重しない迷惑客は歓迎しない」と強い姿勢を示した。移民署は10月3日、姚姓夫婦が「台湾地区への中国大陸地区住民入境許可弁法」に違反したとして、強制退去を命じた。夫婦は同日正午、中国大陸行きの飛行機に搭乗した。
現場の緊張:対立する主張
フェイスブックのビデオによると、事件当日の午後、台湾在住の香港人約20人が集会を開き、黒い「香港を取り戻せ、時代革命」の旗を立てていた。
中国人観光客の男性は旗を引き抜いた後も、「台湾も中国の一部だ」「台湾も香港も中国の一部だ」と主張し続けた。これに対し、周囲の人々は「台湾は台湾人のもの、香港は香港人のもの」と反論した。警察が介入し、2人に現場からの退去を求めた。
法的根拠と今後の対応
大陸委員会は10月2日、姚姓夫婦が「両岸人民関係条例」と「台湾地区への中国大陸地区住民入境許可弁法」に違反したと指摘した。具体的には、「対等な尊厳の原則に反する不適切な行為を行った」こと、および「入境申請の理由や目的が消失し、他の合法的な理由がない」ことが退去処分の根拠となった。
大陸委員会は「台湾人は親切でもてなし上手だが、自重しない迷惑客は歓迎しない」と強調した。また、2人が親族訪問の名目で入境したにもかかわらず、訪問先の親族がすでに中国大陸に戻っていたことを指摘し、「我々の人道的配慮による両岸の親族再会の善意を悪用した」と非難した。
厳格化される入境管理
大陸委員会は、中国大陸からの訪問者が台湾の自主的地位を損なう発言や、対等な尊厳の原則に反する不適切な行為を行うことは許されないと強調した。国家安全保障や社会の安定を脅かす違法行為があった場合、政府は法に基づいて厳しく対処するとしている。
また、大陸委員会は中国大陸からの訪問者に対する安全管理をさらに強化する方針を示した。
過去の類似事例
2019年4月以降、中国大陸の学者李毅氏や東南衛視の駐台記者2名も同様の理由で台湾当局から退去を命じられている。また、2024年初めには、日本在住の中国人インフルエンサー王志安氏が台湾のバラエティ番組に出演し、民進党の選挙戦略を批判したことで、5年間の入境禁止処分を受けている。
一方、許可なく入境した「自由を求めて」台湾に来た中国大陸出身者数名のケースは、現在も司法の審理中である。
編集:高畷祐子 (関連記事: 【独占インタビュー】石破新首相「長期政権は困難」東大教授が ー 政権基盤の脆弱性と課題を徹底分析 | 関連記事をもっと読む )
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