トップ ニュース 米学者「台湾問題はウクライナやベネズエラと異なる」 頼清徳氏を「無謀」と批判した専門家が指摘するトランプ政権下の地政学
米学者「台湾問題はウクライナやベネズエラと異なる」 頼清徳氏を「無謀」と批判した専門家が指摘するトランプ政権下の地政学 2026年2月24日、米ワシントンの連邦議会議事堂下院本会議場で、上下両院合同会議に向けて一般教書演説を行うドナルド・トランプ大統領(写真/AP通信提供)
今年1月、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が拘束されたことを受け、トランプ米大統領は西半球における米国の核心的利益を維持するための政策指針「ドンロー・ドクトリン(Donroe Doctrine)」を公表した。これに対し、中国とロシアは強い批判を続けているが、国際社会ではトランプ政権の隙を突き、中露が台湾やウクライナ問題の解決、さらには台湾への軍事行動に踏み切るのではないかという懸念が根強い。
こうした情勢を受け、米シンクタンク「アジア・ソサエティ」傘下の中国分析センター(CCA)は米東部時間月曜日、「ドンロー・ドクトリンに対する中露の視点:モスクワと北京はトランプ外交にどう応えるか」と題したオンラインセミナーを開催。中露情勢の専門家らが現在の外交局勢について議論を交わした。
米中露の「勢力圏」分割は定石か セミナーはアジア・ソサエティ政策研究所のライル・モリス上級研究員が司会を務め、米海軍分析センター(CNA)のエリザベス・ウィシュニック上級研究員らが登壇した。中でも注目を集めたのは、ブラウン大学ワトソン国際公共事務研究所の客座教授であり、中国イニシアチブ主任を務めるライル・ゴールドスタイン氏だ。同氏は昨年10月、米誌『タイム』への寄稿で、台湾の頼清徳総統を「無謀な指導者」と批判した経緯がある。
ゴールドスタイン氏はセミナーの中で、外交面において中国は自らを「分別のある大人(Adult in the room)」として見せようとしていると指摘した。この傾向は以前から見られたが、米国の「無謀あるいは好戦的な政策」により、いわゆる「グローバルサウス」諸国における中国の評価は相対的に向上しているという。「全体として、北京からは自信の深まりが感じられる」と同氏は分析する。
「勢力圏」は平和への緩衝材か また、ゴールドスタイン氏はトランプ政権によるレアアース(希土類)問題へのスタンスに触れ、これが中国にとって重要な局面であり、世界の歴史的な転換点になる可能性があると言及した。同氏は現在、ワシントンのシンクタンク「ディフェンス・プリオリティーズ(Defense Priorities)」のアジア担当ディレクターも兼任しており、米国の国防政策における「リアリズム(現実主義)」と「抑制」を提唱している。
「大国が勢力圏を画定することで、互いに『緩衝地帯』を設け、『レッドライン(譲れない一線)』を明確にできる。これにより小規模な衝突を鎮め、冒険主義的な行動を回避することが可能になる」とし、こうした動きがさらに進むことへの期待感を示した。同氏はさらに、「現実主義者として言えば、勢力圏とは重力のようなものだ。重力に抗うことはできるが、それは厳然としてそこに存在している」と締めくくった。
米国のアジア協会は2月23日、オンラインセミナーを開催し、米海軍分析センター(CNA)のエリザベス・ウィシュニック氏と、ブラウン大学ワトソン国際公共政策研究所のライル・ゴールドスタイン氏を招き、米中ロ三国をめぐる課題について対談を行った。(写真/セミナーのライブ配信より)
ベネズエラ情勢は中国の台湾侵攻を誘発するか トランプ政権によるベネズエラへの軍事介入が、中国による台湾への武力行使を事実上容認するシグナルになるとの懸念に対し、ゴールドスタイン氏は「飛躍しすぎた議論だ」と一蹴した。同氏によれば、中国の台湾問題に関する意思決定は、米国やロシアの行動とは全く異なる独自の基準に基づいている。
「米国の『裏庭』での行動が、中国の戦略に重大な影響を与えるとは考えにくい。これはロシアによるウクライナ侵攻についても同様だ」と分析。ベネズエラが中国やロシアにとって一定の戦略的関心事ではあっても、核心的利益には遠く及ばないとの見解を示した。マドゥロ大統領の拘束後も、中国側に目立った戦略的調整は見られないが、国際社会における米国の強硬姿勢が、相対的に中国の「威信」を高める結果を招いている側面はあるという。
パナマ運河を巡る大国のパワーゲーム ゴールドスタイン氏は、大国が自国の周辺地域で武力を誇示するのは「常套手段」であると指摘した上で、真に注視すべきはパナマ運河を巡る米中の動向であると強調した。「パナマ運河問題こそ、米国が大国間政治の手法で強力な介入を行っている実例だ」と述べている。
2025年3月13日、貨物船がパナマ運河のバルボア港を通過した。(写真/AP通信提供) トランプ大統領は就任後、パナマ運河の「奪還」を繰り返し公言してきたが、パナマ政府は今週、これに呼応する形で正式に動いた。外電によると、パナマ政府は23日、香港の長江和記実業(CKハチソン)傘下の企業が運営していた運河両端の港湾施設を接収。これに対し、中国政府は強い不満を表明している。
ウクライナ戦争4周年と台湾問題の「特殊性」 ロシアによるウクライナ侵攻開始から4年が経過し、プーチン大統領が強硬路線を拡大させている事実は否定できない。しかし、ゴールドスタイン氏は、ウクライナ情勢が中国の台湾政策に与える影響は限定的だと見ている。「台湾を巡る状況は(ウクライナとは)完全に別物だ」とし、安易な同一視を戒めた。
北極圏・グリーンランドの脅威論に疑問 また、グリーンランドを中露の艦船が包囲しているとの説についても、「事実に反する」と否定した。こうした言説は政治的陰謀や個人的な思惑によるものだと分析。ロシアは現在ウクライナ戦線に注力しており、中国海軍の潜水艦が北極海で活動する実効性についても「可能性は極めて低い」と断じた。
ドナルド・トランプ氏と習近平国家主席が韓国で会談し、全体で約100分に及んだ。(写真/米国ホワイトハウス公式サイト提供)
第3次世界大戦の可能性は低い 今後の国際情勢について、ゴールドスタイン氏は、向こう5〜10年は東北アジアが最大の注視点になると分析する。この地域は中露両国にとって死活的な利益が交錯する地政学的な要衝だ。しかし、米国の戦略家が最も懸念する「中露が結束して米国とその同盟国に対抗する」というシナリオについては、過度の推論であると指摘し、第3次世界大戦が勃発する可能性も極めて低いとの見解を示した。
同氏は、中国によるウクライナ問題への関与が非常に慎重、あるいは限定的である点に注目する。同様に、ロシアが将来的に南シナ海や台湾情勢に介入する可能性についても「否定的な見方が明確だ」と述べる。東北アジアにおける中露の軍事協力の深化についても、「実のところ、双方ともに躊躇しているのが現状だ」と分析している。
「新冷戦」回避を望む中国の思惑 中国が国際情勢において一定の自制を保っている理由について、ゴールドスタイン氏は「新たな冷戦の勃発を回避するためだ」と指摘する。中国もロシアも新冷戦を望んでおらず、特に中国は欧州との関係維持を強く希望しているという。
「米国、そして日本が自制を保つことができれば、新冷戦という事態は避けられるかもしれない」と同氏は提言する。大国間の過度な対立を抑え、安定した関係を築くことの重要性を強調した。
北朝鮮問題を巡る中露の役割分担 朝鮮半島情勢についても独自の視点を提示した。昨年の北京での軍事パレードにおいて、習近平国家主席、プーチン大統領、金正恩総書記の3首脳が並び立ったことは予想外であったとしつつも、中国はこの状況に一定のメリットを見出しているという。
「中国にとって、北朝鮮に対する責任の重荷が軽減された。北朝鮮の『後見人』という役割をロシアが肩代わりした形だ」とゴールドスタイン氏は分析する。ロシアが北朝鮮との相互協力によって国際的な圧力を引き受けることで、中国はより目立たない立場をとりながら、韓国との関係改善に動く余地が生まれたという。
「分別のある大人」を演じる中国 最後に、ゴールドスタイン氏は米国の武力行使のあり方に警鐘を鳴らした。米国が再び恣意的な武力行使に踏み切り、英国を含む国際社会の多くがそれに反対する事態となれば、結果的に中国を利することになると予測する。
「どちらが『分別のある大人(Adult in the room)』か。現在の中国は米国よりも責任ある大国として振る舞おうとしている」と述べ、国際社会におけるソフトパワーの逆転現象に注意を促した。
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