訪台外国人観光客の回復が遅れている中、業界関係者は日台の文化的共感から、日本人観光客が台湾観光を支える潜在市場になりうると指摘し、「消えた日本人観光客を取り戻す必要がある」と述べている。しかし、コロナ禍における観光産業改革の好機を逃し、政策の統合も不十分な状況で、円高に転じる前に準備を整え、日本人観光客の訪台ブームを迎えたいとしている。
パンデミック後、世界的な海外旅行需要が再び高まっている。観光局の統計によると、台湾の今年1月から8月までの出国者数は1,138万人で、パンデミック前の2019年同期比で97%以上まで回復している。一方、同期間の訪台外国人観光客数は497万人にとどまり、パンデミック前の同期と比較して回復率は50%未満で、出国者数との差は641万人と過去最大を記録している。
円安の恩恵を受け、海外観光客が日本に大量に流入する中、今年1月から8月までの台湾人の海外渡航先では、日本が409.6万人で首位を占めている。一方、台湾への入国者の居住地別では、日本人観光客は79.5万人で香港・マカオに次ぐ2位となっており、台湾と日本の間に大きな観光収支の不均衡が存在していることを示している。
星野リゾート:台湾には大きな魅力がある
日本の星野リゾートの台湾総代理店である湯桂禎国際旅行社の董事長・湯桂禎氏は、台湾人の日本旅行熱について、「ここ1年間の円相場が0.21から0.22の間で推移し、海外からの訪日観光を後押ししている」と述べている。しかし、両国の観光構造には違いがあり、日本の年間観光収入約20兆円のうち75%以上が国内旅行によるものである一方、台湾の年間観光収入の半分は出国市場(アウトバウンド)が占め、入国市場(インバウンド)と国内旅行がそれぞれ25%を占めているが、その回復は期待を下回っているという。
パンデミック前と比較して現在の訪台日本人観光客数は60%にとどまっている。湯桂禎氏は「まずはインバウンドの収入を回復させ、消えた日本人観光客を取り戻す必要がある」と述べ、日台の文化的共感から日本人観光客が台湾観光を支える潜在市場になると期待を示している。特に円相場は長期的には上昇傾向にあり、その時に備えて台湾は準備を整える必要があるとしている。
「日本人は海外旅行を好まず、パスポート保有率も低い」と湯桂禎氏は分析する。日本の人口は台湾の6倍だが、出国者数は台湾とほぼ同じだという。観光局は日本人観光客の誘致を続けており、「パスポートを取得して台湾旅行をする場合、台湾の航空会社を利用すると5000円割引」といったキャンペーンや、「日台32の同名駅」シリーズイベントなどを展開している。航空会社も日本での路線拡大や増便を継続しており、日本行きの各便が台湾人を運ぶだけでなく、日本人観光客も台湾に運んでくることを期待している。 (関連記事: 台湾No.1スナック 外国人観光客が虜になった"神スイーツ"一口食べたらヤミツキに! | 関連記事をもっと読む )
星野リゾートの第二事業部マネージャー石川真也氏は、仕事で3、4回台湾を訪れ、「台湾が大好きになった」と語る。台湾は日本人観光客にとって非常に魅力的で、地理的な距離が近いだけでなく、心理的な距離も近いという。日本の街には台湾料理店が多くあることからも日本人の台湾への憧れがわかり、台湾のホテルスタッフや街の商店主も日本語を話すことから、「安心して親しめる国」だと述べている。