半導体大手TSMCの熊本進出以来、九州地域の経済と日本の半導体産業に大きな影響を与え、日台の半導体分野における協力を加速させている。シンクタンク「台湾日本研究院」主催のイベント参加のため来日した郭智輝経済部長は、『日経クロステック』のインタビューに応じた。19日に公開されたインタビューで郭部長は、TSMC熊本工場が短期間で完成できた主な要因は、ソニーグループとデンソーの全面的な協力にあると指摘した。特にソニーグループは、人材派遣などを通じて全面的な支援を提供し、工場建設を円滑に進める重要な要因となった。
インタビュアーの大下淳一氏が、TSMCの熊本進出が九州経済と日本の半導体産業に与えた大きな影響について、台湾側の見解を尋ねた。郭部長は、熊本工場が極めて短期間で建設を完了したことは驚くべきことだと述べた。ソニーグループとデンソーが共同出資して設立・運営するJASM(熊本県菊陽町)が重要な役割を果たし、特にソニーグループは従業員派遣などを通じて全面的な支援を行い、成功の要因の一つとなった。
郭部長によると、現代の半導体工場の建設には膨大な資金が必要で、2ナノメートルプロセス工場の建設費用は300億米ドルに達する。しかし、資金の確保だけでは成功は保証されず、人材育成、技術支援、周辺環境との協力も同様に不可欠だ。TSMCの熊本工場建設の経験から、未知の土地で工場を建設し、スムーズに事業を立ち上げるには、文化や仕事に対する姿勢の親和性が特に重要であることが分かった。
熊本工場の進捗、米国工場を上回る 郭部長:文化的認識がより類似
郭部長は、TSMCが熊本工場建設の1年前に米国アリゾナ州での工場建設計画を発表したと指摘した。米国政府の支援や地元政府の協力を得て、インテルが長年拠点を置くアリゾナ州での計画だったが、TSMCは米国での工場建設過程で文化の違いによる課題に直面した。例えば、仕事に対する意識、責任の取り方の違い、問題発生時の調整の難しさなどがあった。
一方、郭部長は、台湾と日本は文化や仕事に対する認識において多くの類似点があり、協力がよりスムーズだと指摘し、この関係を双子のように緊密だと表現した。さらに、日本の半導体材料・装置供給における優位性も、TSMC熊本工場の建設を強力に支援した。熊本工場で使用される材料の約8割が日本企業から、製造装置の約5割が日本メーカーから供給されており、これらの馴染みのある材料と装置が、工場の立ち上げをよりスムーズにした。注目すべきは、熊本工場計画は米国アリゾナ州工場より後発であるにもかかわらず、今年10月から12月の生産開始を予定しており、米国工場を大きく上回る進捗を見せている。
FBS福岡放送の報道によると、台湾の金属製品関連メーカーによる大規模な商談会が18日に福岡市で開催された。福岡での同種イベント開催は初めてで、TSMC熊本進出により九州地域への注目度が大きく高まっている。今回の商談会には100社の台湾企業が参加し、実際の申込企業数は130社を超え、会場の制限により一部の申込を断らざるを得ないほどの高い関心を集めた。
中華民国対外貿易発展協会の周秀隆副秘書長は、今回の商談会は日本での12回目の開催だが、初めて福岡での開催を選んだと述べた。これは、TSMC熊本進出後、現地に新たな半導体サプライチェーンが形成され、それによって生まれる日台の新たなビジネスチャンスへの期待が高まっているためだ。台湾企業の新たな日本のパートナー探しを支援する機会としたい考えで、これが福岡開催を決めた理由となった。
編集:佐野華美