トランプは確かにグローバル経済・貿易を揺るがす達人だ。就任まで2ヶ月近くあるにもかかわらず、トランプはソーシャルメディアでメキシコ、カナダ、中国に高額関税を課すと宣言し、「トランプ2.0版」の関税戦争が先行上演される形となった。
就任初日にカナダ・メキシコに25%の関税を課す
選挙期間中、トランプは当選した場合全ての輸入品に10-20%の関税を、中国製品には60%の関税を課すと述べた。トランプの関税戦争への執着と前任期の実績から、各国は厳重な警戒態勢を取っており、単なる選挙公約とは見なせない状況だ。
トランプは「期待を裏切らず」、就任前から関税戦争の開始を宣言。自身のソーシャルプラットフォームTruth Socialで、就任初日にメキシコとカナダからの全ての輸入品に25%の関税を課すと投稿。別の投稿では中国からの全輸入品に追加で10%の関税を課すとしたが、時期については明言しなかった。
「トランプ2.0版」の関税戦争でこの3カ国が標的になったのは、さほど意外ではない。この3カ国は米国の輸入額上位3カ国であり、3カ国からの輸入は米国の総輸入の42%を占めている(今年前9ヶ月のデータ)。トランプの考えでは、輸入品は多くの場合「米国人の仕事を奪う」ものであり、輸出こそが望ましい。バイデンの「チップ法」が外国の半導体メーカーを米国に誘致するために補助金を出すことについて、トランプはこの方法は米国の金を無駄遣いすると批判し、関税を引き上げれば外国企業は自然に米国で生産するようになると主張している。そのため、米国の主要輸入相手国を優先的に標的にするのも、それほど意外ではない。
極めて依存的なカナダ・メキシコ トランプ関税で大打撃へ
今後の展開と影響については、様々な変数と「興味深い」要素があり、検討に値する。
まず、トランプが就任初日から関税引き上げの標的にすると宣言したカナダとメキシコについて。これが実現すれば、両国の経済は必ず大きな打撃を受け、その影響は輸出から投資、そして消費にまで及ぶだろう。経済的観点から見ると、両国の対米依存度は極めて高く、まるで附属国のような状態だ。両国の対米輸出は総輸出の80-90%を占め、メキシコの輸出はGDPの40%、カナダも30%以上を占めている。トランプが両国からの輸入品全てに25%の関税を課せば、それは間違いなく大きな打撃となる。
さらにメキシコにとっては、ここ数年、米中貿易戦争の恩恵で多くのサプライチェーンが関税回避のために同国に投資・工場進出してきたが、25%の関税が課されれば、このメリットも消失する。メキシコの投資はGDPの20-30%を占めており、そのため、メキシコの受ける打撃はカナダよりもさらに深刻になるだろう。 (関連記事: トランプ新政権、商務長官にルトニック氏を指名 ! "関税戦争の司令塔"に9.11を乗り越えたウォール街の大物 | 関連記事をもっと読む )
中国への10%関税は許容範囲内か
中国に10%の関税を課すという発表は意外だった。これまでの発言と比べると、かなり「寛容」に見える。トランプは当初、中国に60%の関税を課すと述べていた。この数字が既存の追加関税(25%として計算するが、全ての商品が25%の追加関税対象ではない)を含むとしても、少なくともさらに30%程度の追加関税が必要なはずで、それと比べると10%という数字は特に「寛容」に見える。また、中国への影響は比較的限定的だ。中国の輸出はGDPの19-20%程度で、米国市場は総輸出の17%程度を占めるに過ぎず、カナダやメキシコほど集中していないため、相対的に中国にとって許容範囲内と言える。