舞台裏》頼清徳の良政が暴政に?「派遣ゼロ化」はいかにして公務員を追い詰めたのか

労働部公務員を追い詰めた制度的な遠因は、頼清徳が行政院長時に推進した「派遣ゼロ化」政策まで遡る。写真は2017年、労働団体が行政院に訪れ頼清徳の「功徳を積む」発言を非難した。(資料写真、謝孟穎撮影)
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労働発展署北分署の職員の自殺事件について、労働部長の何佩珊は先日調査報告を公表し、文官システムには「想像もしなかった邪悪さ」があると述べた。もしこれを「制度による殺人」として、民進党の天下り文官による権力の乱用やいじめの悪を覆い隠そうとするなら、その意図は当然邪悪だ。しかし、台湾の行政機関の情報部門が長期にわたり人手不足で、外部委託に依存し、外部委託部門と化していたことも争えない事実だ。政府が我に返って「AI行動内閣」を大々的に推進し、素人の天下り官僚が情報部門に「人工知能プロジェクト」の実行を強要すれば、人命が失われるのも時間の問題だった。重要な時期に、北分署が費用をかけて雇った情報外部委託の人員が、職員の指揮監督範囲外にいたのだ!

北分署の謝宜容署長は就任2年で署内の職員を酷使し、上意に迎合して「人工知能プロジェクト」を推進した結果、北分署情報部門の職員は毎日午前4時・5時に出勤、夜7・8時にようやく退勤する状態となった。超過勤務でも虚偽の打刻をさせられ、このような労働条件は国民の怒りを引き起こした。呉姓職員の長期にわたる超過勤務について、民進党の林淑芬立法委員が問題の核心を指摘した。

林淑芬は先日の質疑で、北分署情報部門の人員配置が明らかに不合理だと指摘した。「行政院所属各機関情報業務委託作業実施弁法」によると、北分署の情報業務委託において、請負業者は署内に1+5名の請負人員を配置できる。委託業者は6名の職員を北分署にプロジェクト実施のために派遣したが、北分署情報部門の職員が上級からの臨時業務を任された際、請負人員に協力を要請できなかった。これは「政府機関(構)労務請負参考原則」で、各機関が労務請負を利用する際、「労務請負と労働者派遣の区別を明確にし、請負人が派遣した労働者に対して実際の指揮監督管理を行ってはならず、履行成果または品質についてのみ契約規範への適合を請負人に求めることができる」と特別に規定されているためだ。いわゆる「指揮監督管理」には、勤怠管理、残業協力の要請、作業の手配及び配置に関する指示などが含まれる。

勞動部調查報告,稱勞動力發展署北分署長謝宜容管理方式「目的良善」惹議,有民眾到行政院新莊聯合辦公大樓獻花,留下「立意良善」、「目的良善」字樣反諷。(取自黃益中臉書)
​​公務員の死は世論の騒然を引き起こし、市民らは行政院新荘連合オフィスビルに献花し「意図は善良」「目的は善良」という文字を残し労働部を皮肉った。(資料写真、黄益中のフェイスブックより)​

派遣人材が請負に変更 公務員は請負人を指揮監督、不可に

林淑芬は、以前は政府が情報人材派遣会社と協力し、各機関の正規職員は派遣社員を指揮監督できたが、「派遣ゼロ化」政策の実施により外部委託人材が請負に変更された後は、逆に請負人を指揮監督できなくなり、制度面で大きな問題が出ていると指摘。林淑芬が言及した「派遣ゼロ化」政策は、総統の頼清徳が行政院長を務めていた時に推進した政策だ。 (関連記事: 台湾の職場いじめ「定義なし」! 頼総統が検討、立法院が日本法を参考に提言 関連記事をもっと読む

2018年7月18日、行政院は正式に「行政院及び所属機関(構)労働者派遣運用見直し実施計画」を承認し、2021年から労働者派遣の運用を禁止することとした。「派遣ゼロ化」政策の発表後、労働団体は一般的に、政府機関が労務請負方式に切り替えて派遣人材に代替すると予測した。当時、行政院の報道発表では、7000人余りの派遣人材のうち9割が政府の直接雇用人材に転換され、10%未満しか他の方式での雇用に転換されないことを断言していた。頼清徳は行政院会議で、当時の施能傑人事長に対外的なコミュニケーションと説明を重ねるよう指示した。