論考:民進党の側翼とエコーチェンバーの発生源

政務委員の陳時中(左)と比例区立法委員の王義川が、草屯鎮長選における「大リコール」を呼びかけたが、民進党は草屯鎮長補欠選挙で大敗を喫した。(憨川のFacebookより)
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先週末の草屯鎮長補欠選挙で、予想通り国民党が大勝した。意外だったのは、民進党が基礎票しか確保できなかったことだ。草屯鎮は地方政治において「激戦地区」とされ、これまでの選挙では青陣営(国民党)と緑陣営(民進党)が交互に勝利を収めてきた。非政治的要因による補欠選挙(前任者が病気で逝去)であり、民意の青緑支持を測る指標とする必要はなかったはずだ。しかし、これは基隆市長リコール案に続く3ヶ月以内の2度目の選挙・リコール活動であり、民進党が「リコールの前哨戦」と位置付けた「2度目の失敗した前哨戦」となった。民進党がまだ警戒心を持たず、エコーチェンバーに溺れ続けるならば、民進党は3度目の失敗を迎え、賴清德総統の統治に避けられない打撃を与えることになるだろう。

政権運営9年で、民意の正確な把握力を失う

民進党の戦略的な誤りは、リコールを選挙での敗北に対する武器として見なし、正当な理由なくリコール案を乱用したことにある。基隆市長の謝國樑へのリコール案の失敗は、その明らかな証拠だ。奇妙なことに、失敗してもなお、その立ち位置自体が誤っている戦略を転換できず、戦術面で完全に的を外してしまった。草屯鎮長補欠選挙はその例である。

民進党は「大リコール」を叫び自ら熱中するも、民意の支持を得られていない。選挙戦に長けていたはずの民進党が政権運営9年を経て、民意の風向きへの感覚を完全に失ってしまったことは、最も理解しがたい点である。

一地方の鎮長補欠選挙で、民進党は主軸を「全国大リコール」にまで引き上げ、比例区立法委員の王義川・政務官の陳時中・林靜儀らを動員し、選挙応援の場で「リコール」を大いに語った。政務官が立法委員の監督を受けながら、不適切にも青白陣営の立法委員のリコールを大いに語ったことが、1つめの誤りだ。比例区立法委員はリコールの影響を受けないにもかかわらず、同党の立法委員もリコールの報復を受ける可能性があることを無視した「他人事」的態度が、2つめの誤りだ。

陳時中、王義川らは総統・立法委員選挙の時点で既に民意から嫌悪される対象となっていた。陳時中を見れば新型コロナウイルス流行期のワクチン・マスク・検査キットなどの「国家チーム」の悪行を想起させ、今なお国民に対する説明責任を果たしていない。王義川を見れば、選挙期間中の「神がかり的」な振る舞いの滑稽さと嘆かわしさ、立法院での議事スタッフへの水一杯での高圧的な態度が思い出される。彼らが民進党の票の結集に貢献できないことは周知の事実だが、民進党だけがそれを知らないか、あるいは知っていても彼らを「重用」しないことで側翼からの攻撃を恐れている。簡単に言えば、民進党は国家資源を使ってエコーチェンバーを厚くする土壌を育てた結果、自らがそのエコーチェンバーに埋もれ、抜け出せなくなっている。 (関連記事: 風評:石破茂氏の現実主義が「台湾有事」の国内宣伝幻想を打破 関連記事をもっと読む

認知作戦は、自己欺瞞にしかならず、他者を欺けない

民進党のエコーチェンバーは、自己欺瞞に陥りながらも他者を欺くことができないほど深刻な状態にある。「認知戦」を専門とする立法委員の沈伯洋は、しばしば同僚の立法委員を「中共の協力者」と非難するが、彼が創設した黒熊学院は国庫から絶え間なく資源を掘り出し、民主基金会から国防部、さらには内政部(警政署と消防署を含む)にまで及んでいる。「反共」は良いビジネスとなり、沈伯洋は黒熊学院のいかなる職名も持たないと主張するものの、利益供与の嫌疑を免れ難い。しかも、この巨額の利益は政府から監督職にある立法委員の関連団体へと流れており、これは蔡英文時代の文総が政府活動を請け負い、自社に転送していたことと何が違うのか。