中国人民解放軍が最近、西太平洋で大規模な海上展開を行い、浙江省と福建省の東側空域に7つの立入禁止区域を設定し、多数の海軍艦艇と公務船を動員して海上軍事行動を実施している。今回は第一列島線まで動員範囲を拡大したにもかかわらず、過去のような大規模な宣伝は見られない。英国『フィナンシャル・タイムズ』は、この「新常態」により台湾と米国は中国側の意図を評価しづらく、対応が困難な新たな課題となっていると指摘。
解放軍の台湾に対する文武両面での威嚇は今に始まったことではない。今回の賴清德総統の南太平洋友好国訪問と米国ハワイ・グアム経由の際も、台湾は中国からの軍事演習圧力に備えていた。しかし台北を驚かせたのは、中国海軍が確かに大規模な展開と配備を行い、北京も上海から香港沖合までの2日間にわたる7つの航行禁止区域を宣言したものの、解放軍が終始沈黙を守り、正式な演習発表を行わなかったことで、これは過去の手法とは対照的である。
台湾の国家安全保障当局者は、中国が過去1週間で約100隻の艦船を配備し、その3分の2が海軍、3分の1が海上警察からのもので、範囲は東シナ海、南シナ海、そして台湾東部沖の西太平洋に及び、動員配備期間は70日間に達し、初めて解放軍の3つの沿岸戦区を網羅したと述べている。『フィナンシャル・タイムズ』は、この30年来最大規模の海上軍事行動について、台湾と米国は全く異なる結論に至ったと指摘。
台湾の国防部は9日に緊急対応センターを設置し、同時に戦備演習を開始し、北京が軍事演習を発表するか否かにかかわらず、台湾に深刻な脅威をもたらすと強調している。しかし、ワシントンは今回の中国側の軍事活動のレベルは過去の大規模演習と変わらないとし、今回の展開が賴清德のハワイとグアム経由に対する反応だとは考えていない。『フィナンシャル・タイムズ』は、台米間のこうした見解の相違は、双方及びその同盟国が中国側の意図を評価し、北京の軍事力による近隣諸国への圧力に対応する際の課題を浮き彫りにしていると指摘している。
米国の高官は、賴総統が「控えめな」形で米国を経由したため、中国はこれに特別な反応を示さないことを決めた可能性があると述べている。また北京は米国の大統領交代期間中に混乱を引き起こしたくないのかもしれず、あるいは最近の軍事活動は中国国内での解放軍将領に対する反腐敗調査と関連している可能性もあるとしている。観察筋は『フィナンシャル・タイムズ』に対し、中国は演習の発表と非発表の両方の手段を組み合わせることで、相手方の内部に混乱と不確実性を生じさせる可能性があり、この手法は台湾侵攻の準備を敵に察知されにくくすると述べた。
台湾の国家安全保障当局者は『フィナンシャル・タイムズ』に対し、「これが台湾をはるかに超えて、第一列島線を封鎖できることを示すものだと我々は同意している」「しかし、このようなグレーゾーンの戦術は我々と近隣諸国に対する脅威がますます大きくなっている」と述べている。米国当局者は、台湾が以前より中国の活動を探知する能力が向上しているため、台湾側が過度に懸念している可能性があると考えている。これに対し台湾当局者は、「特に中国が沈黙を守っている中で、我々の周囲で何が起きているのかを国民が知る必要があるため、今回我々が目にした状況をより明確に伝えることを決めた」と述べた。
ある西側外交官は、台湾政府は「国民の目を覚まさせよう」としていると考えており、それは政府が一方的に軍事態勢の強化を求めるより、国民に解放軍の演習に注目させる方が効果的だからだとしている。米国当局者も、解放軍の演習規模拡大は日本とフィリピンに影響を与える可能性があると指摘している。日本の高官は『フィナンシャル・タイムズ』に対し、「中国は過去の演習のたびに新しい境界線を越えてきた」「今や彼らは、発表なしでこの規模の演習を行うという別の新常態を作り出しており、これは我々全員にとって対応が困難である」と述べた。
編集:佐野華美
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