【舞台裏】中国軍、正体不明の大規模軍事行動 ― 台湾包囲の新戦略か

中国軍が台湾海峡周辺で大規模な軍事行動を展開、台湾国内では軍事演習であるか否かで議論となっている。軍事専門家は、この行動が示す脅威のレベル上昇という意味合いこそが真に重要と指摘。写真は台湾海巡署艦艇が東部花蓮沖で中国海警船を追尾している様子。(資料写真、AP通信)
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賴清徳総統の外遊帰国後、中国は国家安全保障幹部と軍当局の言葉によると、1996年の台湾海峡ミサイル危機以来、台湾だけでなく第一列島線全体を対象とした海上での最大規模の軍事行動を展開。解放軍は過去のように正式に「軍事演習」と発表せず、国家安全保障関係者はこれを解放軍が「言い出せない」ためとしている。一部の軍事専門家や野党関係者は、これは台湾が政治的な焦点転換などの非軍事的理由で意図的に誇張し演出した軍事演習だと考えている。国台弁の回答は「兵は常勢なく、水は常形なし」と深遠なものであった。

解放軍は確かに過去の台湾包囲軍事演習や「統合利剣」シリーズ演習のように、演習を公開発表して航行禁止区域を設定するなどの情報を出さず、山東、遼寧の2隻の空母の姿も見えず、出動した艦船も実弾を搭載せず、実弾射撃科目を設定した形跡もなく、確かに「軍事演習」の規格には当たらない。しかし、東シナ海から台湾海峡全域を経て南シナ海まで、数千キロメートルに及ぶ海域で、大量の解放軍海軍および海警船艦が活動していたのは事実であり、これにより我が国の安全保障幹部は警告を発し、軍も慎重に危機管理センターを設置した。「敵を寛容に見積もり、防御は厳重に」という基準で見れば、我が軍の対応にも疑問の余地はない。したがって、国台弁の言う「兵は常勢なく、水は常形なし」が最も適切な解釈かもしれず、我々としても敵が来ないことを頼みとしてはならない。

中共日前發動大規模軍事活動,梅家樹聽取台海周邊共軍動態報告與當前情勢,通令解除各級應變中心。(國防部提供)
中国軍は今回「軍事演習」とは称していないものの、大量の海軍・海警船艦を実際に展開。参謀総長の梅家樹(写真)は軍の危機管理センターで対応に当たっている。(資料写真、国防部提供)

軍事演習と称さない中共 大規模軍事行動で脅威を強める

我が方のある軍事情報関係者は、唯一議論の余地があるのは、国家安全保障幹部が解放軍は90隻の艦船を動員し、少なくとも70日の展開期間を要したと述べ、さらに台湾だけでなく地域内の他国も脅威にさらすと主張した点であるとしている。この関係者は、2024年10月に解放軍が突如「統合利剣-2024B」軍事演習を実施した際、わずか数時間で大量の艦船が台湾周辺の海空域に出現したことから、解放軍の海空軍はすでに迅速な動員能力を有しており、たとえ90隻の艦船を展開するにしても1、2日で可能であり、70日も要しないはずだと指摘。しかし、理解によると、国家安全保障関係者が指摘したのは、解放軍が一時に90隻の艦船を動員するのに70日かかるということではなく、今回の大規模軍事行動全体の布陣に、我が国の安全保障システムが把握する限り少なくとも70日を要したということである。 (関連記事: 《中国軍事演習》予告なしの大規模展開が“新常態”に、台湾と米国は新たな課題に直面―FT紙報道 関連記事をもっと読む

この軍事情報関係者は、国家安全保障幹部が解放軍の演習は他国にも影響を及ぼすと指摘し、さらに「当時日韓海域に滞在していたロシア艦隊」にまで言及したことについて、理論的には、ロシア軍まで関与する可能性のある解放軍の超大規模軍事演習であれば、米日などの国々が必ず重大な懸念を表明するはずで、そうなれば台湾の警告が虚言でないことを証明できたはずだと述べている。しかし、皮肉にも、これまで解放軍が台湾海峡で軍事演習を実施する度に厳しい発言をしてきた米国の反応は今回極めて平淡で、米国防総省や国務省は態度を表明せず、米国の当局者は外国メディアを通じて、解放軍の活動は確かに増加しているものの、規模は過去の大規模演習と一致していると発言。日本政府も的を絞った対応を行わず、日本防衛省も12月上旬に、合計約10隻の中国艦艇4グループが第一列島線を通過して西太平洋で活動しているという発表を行っただけである。