伊藤忠の台北101株式売却の理由が明らかに 取引成立の鍵はここにある

台北101の最大単独株主である日本の伊藤忠商事が保有株式の一部売却を検討している中、市場の注目が集まっている。(陳怡慈撮影)
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郭国文立法委員は本日(23日)午前、立法院財政委員会で、日本の伊藤忠商事が台北101の株式売却を検討しており、中信金控グループがそのうちの5%の取得に関心を示していることについて質問を行った。事情に詳しい関係者によると、伊藤忠が株式売却を望む背景には3つの理由があり、この案件の成立は価格がカギとなっているものの、現時点では不確定要素が多いとしている。

台北101の最大単独株主は当初、頂新グループであった。同グループが食用油スキャンダルで問題を起こした後、2018年に約6.65億米ドル(当時のレートで約202億台湾ドル)で保有する約37.17%の株式を日本の伊藤忠商事に売却。これは伊藤忠グループの2社で保有しており、台湾伊藤忠投資が約32.15%、西松台湾投資が約5.03%を保有している。

台北101は好収益、配当利回りは5~9%の間

財政部と金管会が本日財政委員会に提出した書面報告によると、台北101の今年1-11月の自己集計による営業収入は54.37億台湾ドルで、前年同期比7.43%増加した。今年の通年営業収入は60億台湾ドルを突破する見込みで、予算達成は予想を上回っている。収益面では、今年1-11月の税引後純利益は22億台湾ドル超で、累計の1株当たり税引後純利益(EPS)は1.54台湾ドルと好調で、来年の税引後純利益は今年比で約4%の成長が見込まれている。

事情に詳しい関係者によると、台北101は過去10年間、毎年の利益から株主に現金配当を実施しており、帳簿価額1株15台湾ドルで計算すると、配当利回りは新型コロナウイルスのパンデミック期間中が最も低く年約5%、その他の年は概ね8~9%となっており、「かなり良好な投資対象」とされている。では、なぜ日本の伊藤忠商事は株式を売却しようとしているのか。その背景には3つの理由があるという。

第一に、日本の経済状況が芳しくなく、伊藤忠商事の経営圧力が小さくないため、海外保有株式を売却して本国での事業運営に必要な資金に充てたいとしている。「不採算投資は売却しても資金を得られないが、収益性の高い投資なら利益確定の機会がある」というのが売却の第一の理由である。

第二に、日本の伊藤忠商事の台北101株式は2社で合計約37.17%を保有しているが、そのうち台湾伊藤忠投資の持株比率約32.15%については、日本の会計基準により持分法で連結財務諸表に計上する必要があり、開示事項が多くなっている。持株比率が20%未満になれば財務投資として扱われ、開示事項は少なくなる。

つまり、伊藤忠は今回、37.17%または32.15%の全株を売却するのではなく、台湾伊藤忠投資の32.15%を20%未満に引き下げたい、すなわち10数%程度の株式を売却したいということである。 (関連記事: 《閻学通氏分析》中国は今後4年間、経済回復を優先  台湾統一の具体的な予定は立てず 関連記事をもっと読む

第三に、伊藤忠が頂新グループから台北101株式を取得した当時、円ドル為替レートは1ドル約111円であったが、6年余りで1ドル156.6円前後まで円安が進み、下落幅は29%超となっている。伊藤忠にとっては、当時の台北101株式の購入価格で「原価」売却したとしても、為替差益だけでもかなりの額になる。

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